このストレス社会の中で、如何にヲタクでいられるか

女としてだけでなく、人間としてすら腐ってきた感じがする者の日記です。

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2008.05.27

盗賊と冒険者。

グレイ考察その2。
ダウド編。


長くなりました…。




***


湯の支度は出来ていると旅先で立ち寄った宿の者から聞いていたので特にすることもないダウドは夕飯時になるまでの時間潰しに先に風呂に入ることにした。
宿を取った後は基本的に皆好きに行動する。
海賊船長だったホークは響かない程度に酒を嗜むし、アイシャはたいていダウドと一緒にジャミルの買い物について回るが,今日は長旅が小さな体に堪えたのか早々に部屋に篭ってしまった。ジャミルはといえば、直ぐ戻るといって宿を出ていってしまった。恐らくは手に入れた物を換金しに行ったのだろう。もう一人、グレイもいるがいつもどこで何をしているかダウドはよく知らなかった。
一人宙ぶらりんのままでいるのも耐えられなくて、ダウドは一人風呂場ヘ向かった。

誰かが入っている気配は特になかった。
少なくとも、浴場の硝子戸を開けた時までは。
迫る湯気に目を細め広い浴場にダウドは感嘆の声を上げた。
「おぉ~…」
ほぼ貸し切り状態の優越に浸りながら一糸纏わぬ姿で中へ入って行った。好きな場所を取り、汗を流して湯に漬かろうと今度は浴槽へと向かった。広い共用の浴槽が全て見える頃、ダウドの視界に何かの陰が映った。
「…?」
二度見してそれが漸く人の形をしていた事に気がついた。
「ぶわぁっっ!!!!っ、―グレイ?!」
「……。」
灰色の剛毛を束ねる事もなく湯船に浮かべ、相変わらず感情の読めない顔で浴槽に漬かっていた。ダウドの悲鳴が上がった瞬間も、グレイは顔色一つ変えることはなかった。
「なんだー、びっくりしたぁ~。何時からいたの~?」
早鐘を打つ心臓を必死で落ち着けてダウドは言いながら再び湯船に片足をつけた。
一緒に入る事になったのを嫌悪しているのだろうか、浴槽に入ろうとするダウドをグレイが静かに監察していた。
「お前が入る前からいた。」
「あぁ~」
「…」
「……」
空しく会話は尻すぼみに消失していった。
無表情で何を考えているか読みにくい。
いつか相棒のジャミルがそうぼやいていたのをダウドはしっかり覚えていた。ジャミルが分からないものは、頭の悪い自分に分かるはずがない,と考えもしなかった事だ。今実際に見ても、細かな汗を顔に浮かべているがそれ以外は普段と全く同じだ。恐らく読む感情すらないのではなかろうか。
じんわりと身体にしみこむ湯の熱を感じながら思考の隅にそう思った。
何かしらの感情が湧かないという事は、興味がないのだろう。
(あぁ…。基本的に無頓着っていうのはありだな…)
顔の作りも悪くない。寧ろかなり良い方だ。髪も小奇麗に切るなり手入れなりすれば寄ってくる女は五万といるだろうに。何故そうしないのか。
無頓着故だからだ。
(…難儀な世の中だよなぁ…)
こういう存在もいるという事だ。
ダウドにしてみれば取るに足りないことだった。思考の切り替えは早かった。
(暖かい…。)
ゆっくりと水に漬かるなど旅をしなければあまり機会などなかっただろう。湯をこんなに使うなど、贅沢な事だ。自分はジャミルが生きているとわかればそれでよかったのに。傍にいられる。これ以上の贅沢があっていいのだろうか。今ジャミルが傍にいない事が不安に思えた。
「…」
虚空を横切る視界の途中に灰色の髪が映った。改めて見れば不思議な髪色だ。ジャミルのように綺麗ではないが。
「グレイの髪って何でそんな白いの?」
「聞いてどうする」
まともに答えが返るとは端から思ってはいなかった。冷たく突き放すような印象を与える即問にダウドは答えられなかった。
「……。」
「…。」
降る沈黙に盗賊の少年がする事はないと思っていた。
「あ、わかった!」
思考が止っているわけではなかったのか。予想を裏切るダウドの言動にグレイは僅か苛立ちを覚えた。
「人に気使いすぎたとか?!」
「俺は元々この色だ。」
グレイの眉間に皺が寄った。低い声が更に低くなったような気がしたが、ダウドが驚くべきはそこではなかった。
「えぇーっ!白髪じゃないの?!なんだー…。もしかしたら凄い良い人かと思ってた~…」
「………」
違うのかと落胆するのをグレイは無言で眺めた。
同じ旅の仲間とはいえ、まるで警戒心のない言動。相方の盗賊とはまるで正反対の性質のこの少年がなぜ一緒に今までやってこれたのか、グレイは不思議でならなかった。
話す言葉の一つ一つにふてぶてしさのようなものが感じられた。ぶつぶつと切れる会話になんら気まずさを感じるわけでもない。必要最低限の答えに勘ぐるわけでもない。
独自に思考を進めているのではないか。
それをジャミルが先んじて汲み取ってしまうのではないだろうか。それが長く続いて、自から自分の考えを表現する事を,その方法を失ったのか忘れてしまったのかしたのだろう。
戦闘では頻繁にジャミルを敵の攻撃から庇っているその体の肉付きはなかなかにしっかりしている。
骨格自体が丈夫なつくりだったのだろう。出会ったばかりはろくな物を食べていなかったせいか貧弱な印象が強かったのだが。
監察すればするほど奇妙な生き物だ。熱に耐えられず湯船から這出るダウドの背にグレイは嘆息した。
(あいつには語彙が足らん…。)
再び訪れた静寂をグレイは楽しむ事とした。


******

互いに足りないものを…表したかったんですが;
黙々と何かを考えているとどうしても長くなるのはどうにかならんものか…。
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